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2次冷却材漏えい事故

晨怡热管 2007-2-28 2:43:09

1. 「もんじゅ」の安全審査と「2次冷却材漏えい事故」について

「もんじゅ」の安全審査では、「2次冷却材漏えい事故」として炉心冷却能力の解析と漏えいナトリウムによる熱的影響の解析が行われている。熱的影響解析では、漏えいナトリウムの流出・移送過程におけるナトリウム燃焼による漏えい室での圧力上昇と漏えいナトリウムの貯留後における貯留場所の建物コンクリート温度上昇が評価されている。

設置許可申請書添付書類十の「2次冷却材漏えい事故」の熱的影響解析の目的は、同事故時に2次冷却系の系統分離機能が維持され得ること、つまり健全な他の冷却系統によって、原子炉は停止後も十分冷却され得ることを確認することにある。そのために、ナトリウム漏えい時の影響が最も厳しい事態、すなわち、漏えい室の雰囲気圧力が高くなるように厳しい条件を課して解析している。  

また、漏えいナトリウムによる温度の影響については、漏えいナトリウムの貯留場所について、建物コンクリートの温度上昇を解析して、長期間の建物構造の健全性を確認したものである。

「もんじゅ」では、2次冷却系統が3ループあり、ループごとに蒸気発生器と空気冷却器が設置されている。各ループは、コンクリート壁等によって分離されている(これを系統分離という)。原子炉停止後は、1ループの空気冷却器があれば、崩壊熱除去が可能となるように設計されている。従って、原子炉停止後、原子炉の冷却ができなくなる可能性があるのは、3ループある冷却系統が全て機能を失う場合である。3ループの冷却系統が同時に機能を失う可能性があるのは、漏えいしたナトリウムの燃焼によって高まった圧力によって各ループを分離するコンクリート壁等が破壊されて、隣接するループの機能を喪失される場合である。判決では、3つのループが全て機能を失うことも否定できないと判示しているが、以下に述べるように3つのループを分離しているコンクリート壁等が破壊されて全てのループの冷却機能が失われることは工学的にあり得ないことから、判決の判断は誤りである。申請書等には、床ライナの温度についての記述もあるが、これは上記の漏えい室の雰囲気圧力が高くなる場合において、床ライナが熱膨張により壁等と干渉を起こさないかどうかを確認するという観点から念のために評価したものであり、「2次冷却材漏えい事故」解析の目的である原子炉の冷却能力の維持という観点からは、必ずしも必要なものではなかった。

なお、安全審査では基本的設計方針の妥当性が審査されるものであり、本判決で問題とされた床ライナに関しては、「ナトリウムと床コンクリートとの直接接触を防止するため床ライナを設置すること」が基本的設計方針、即ち、安全審査の対象である。この基本的設計方針に基づき、実際の設計が行われることになるが、床ライナの寸法、肉厚等をどのくらいにするか、といった具体的な設計の妥当性については、詳細設計段階で確認されるものである。

 

 

2. 溶融塩型腐食により床ライナに貫通孔が生じるか

<ポイント1:溶融塩型腐食により床ライナが腐食されると、床ライナの健全性が維持されるとは認められない>

(1) 判決の内容

① 本申請者のしたナトリウム燃焼新解析でも、上限値で見れば、厚さ約6ミリメートルの床ライナに残される余裕は僅か約0.5ミリメートルに過ぎないことになるのであって、これでは床ライナの健全性が維持されていると認めることは困難である。[判決219ページ(以下P.219と示す。)]

② 安全評価の観点からすると、ことがすべて計画どおりに運ぶことを前提に設定された上記解析条件は、ナトリウム漏えい事故時の床ライナの健全性を実証するための解析としては、厳しさ(保守性)に欠けるものといわなければならない。仮にナトリウムが本件ナトリウム漏えい事故時と同じ3時間40分続くとするとすれば、腐食の上限値が6ミリメートルを超えることは明らかである。[P.220

 

(2) 事実関係及び判決の問題点

判決では、溶融塩型腐食を仮定したナトリウム燃焼新解析結果では、床ライナの健全性が維持されると認めるのは困難であり、漏えい継続時間についての条件は厳しさに欠けると判示している。しかし、以下に示すように、ナトリウム燃焼解析は、十分な厳しさ(保守性)と妥当性をもって実施されたものであり、床ライナの健全性が維持されるとすることは妥当である。

床ライナの腐食量は、腐食速度と時間によってきまる。ここで、腐食速度は温度に依存し、温度が高くなるほど腐食速度は速くなる。また、腐食を受ける時間が長くなるほど腐食量は大きくなり、この時間は漏えい継続時間に支配される。このことから、床ライナ腐食量の評価は、漏えい継続時間や床ライナ温度について現実に想定される諸条件の中で考えられる厳しい条件を設定した上で評価している。

①漏えい継続時間の妥当性:

 「もんじゅ」事故後の現状設備での解析[*1]では、小漏えいの場合、漏えいの検知と運転員の判断・操作等の時間として30分、さらにドレンに要する時間の約52分の合計として、漏えい継続時間を約82分としている[*2](炉安審ワーキンククループ資料、Na-59-3)。これは、「もんじゅ」事故における継続時間(約3時間40分)について、十分な検討を加え、運転手順を見直した上で、各々の項目に余裕を持って設定したものである。

 確かに、平成7年の「もんじゅ」でのナトリウム漏えい事故時の漏えい時間(3時間40分)と同じ時間漏えいが継続し、溶融塩型腐食が起きると仮定すれば、腐食の上限値は6mmを超え、床ライナに孔が開くことになるが、「もんじゅ」漏えい事故後、運転手順書が改訂され、運転員がそれに従って操作することにより、長時間に渡る漏えい継続は防止できるから、6mmの床ライナに孔が開くような事態を想定することは妥当ではない。

②床ライナ温度評価の妥当性:

 「もんじゅ」事故後に、ナトリウム漏えい燃焼実験のデータや「もんじゅ」事故の調査結果に基づいて、溶融塩型腐食の腐食速度は床ライナ温度の上昇に伴い加速されることから、床ライナの最高温度を厳しくするように入力条件の設定等[*3]を行ってナトリウム漏えい燃焼解析を実施した。その結果、中小漏えいの場合、局所的な床ライナ最高温度は880℃の計算結果を得ている(炉安審ワーキンククループ、Na-59-3)。これは、実験データ等と比べても十分に厳しい(保守性のある)結果である[*4]

③腐食量評価の妥当性:

 腐食量評価では溶融塩型腐食が生じると仮定しているが、ナトリウム漏えい燃焼実験-Ⅱで生じた溶融塩型腐食は、実験固有の条件(実験状態観察のためにカメラ取付部の煙を追い出すために換気を行ったことによる外部からの湿気を含んだ空気の流入、狭い実験セルでのコンクリートからの多量の水の放出)に依存したものであることが指摘されている。したがって、「もんじゅ」実機ではこのような溶融塩型腐食は生じがたいと考えられるが、あえて溶融塩型腐食が発生すると仮定して、腐食量の評価を行ったものである。また、溶融塩型腐食速度のデータは、「もんじゅ」事故後に系統的な実験を行い、信頼性があるデータを蓄積したものである[*5]

  1. 床ライナ腐食の評価の妥当性:

 床ライナ腐食の評価は、上述のように項目すべてについて保守性のある条件を考慮したもの、すなわち、漏えい継続時間や床ライナ温度について厳しい条件を設定した上で解析を行い、更に溶融塩型腐食を仮定するとしても、床ライナの腐食減肉量は中央値で約3.3mmであることを示したものである。更に念のため、腐食データの上限を仮定するとしても5.5mmであることを示しており、溶融塩型腐食により床ライナに貫通孔が生じることはない。

<用語解説> 溶融塩型腐食

 溶融塩型腐食とは、水酸化ナトリウム等から成る溶融体中に過酸化ナトリウムが存在すると、非常に酸化力の強い過酸化物イオン(O22-)が生じ、鉄等がイオンの形で直接溶かされる形態の腐食を言う。

 「もんじゅ」2次系ナトリウム漏えい事故が発生した2次主冷却系配管室に比べて狭い空間で行われた燃焼実験-Ⅱでは、壁コンクリート等から放出された水蒸気とナトリウム酸化物等との反応によって水酸化ナトリウムが生成し、結果として過酸化物イオンが鋼材面に到達できる環境が形成されたことから、溶融塩型腐食により床ライナ(鉄)の減肉が進行したために、穴が開くに至ったものと考えられる。

 なお、このタイプの腐食を原子力安全委員会では、「鉄、ナトリウム及び酸素が関与する界面反応による腐食」と呼んでいる。

(3) 参考

[*1] 旧科学技術庁(平成9年に、「もんじゅ」2次系ナトリウム漏えい事故に関する原因究明及び再発防止対策の一環として実施したもの。炉安審ワーキンククループ資料、Na-59-3)が念のため溶融塩型腐食による減肉量の検討を行った。

 旧科学技術庁(平成9年に、「もんじゅ」2次系ナトリウム漏えい事故に関する原因究明及び再発防止対策の一環として実施したもの。炉安審ワーキンククループ資料、Na-59-3)が念のため溶融塩型腐食による減肉量の検討を行った。

[*2] 漏えい継続時間:漏えい率により原子炉が自動停止するか否かや、ドレンすべき系統のナトリウム量が異なるので、漏えい継続時間は漏えい率に依存する。
 漏えい率が0.01~0.1t/hの場合は、原子炉は手動停止され、ドレン開始までは30分である(検知時間(5分)+判断時間(10分)+原子炉手動停止操作時間(1分)+原子炉停止確認(6分)+ドレン準備時間(8分))。ドレン時間は、約52分で、合計の漏えい継続時間は約82分となる。
漏えい率が119t/hの場合は、原子炉は自動停止され、ドレン開始までは20分である(検知時間(2分)+原子炉停止確認と判断時間(10分)+ドレン準備時間(8分))。また、漏えい自身により系統から大量のナトリウムが失われるので、ドレン時間は約18分となり、合計の漏えい継続時間は約38分となる。

 漏えい継続時間:漏えい率により原子炉が自動停止するか否かや、ドレンすべき系統のナトリウム量が異なるので、漏えい継続時間は漏えい率に依存する。 漏えい率が0.01~0.1t/hの場合は、原子炉は手動停止され、ドレン開始までは30分である(検知時間(5分)+判断時間(10分)+原子炉手動停止操作時間(1分)+原子炉停止確認(6分)+ドレン準備時間(8分))。ドレン時間は、約52分で、合計の漏えい継続時間は約82分となる。漏えい率が119t/hの場合は、原子炉は自動停止され、ドレン開始までは20分である(検知時間(2分)+原子炉停止確認と判断時間(10分)+ドレン準備時間(8分))。また、漏えい自身により系統から大量のナトリウムが失われるので、ドレン時間は約18分となり、合計の漏えい継続時間は約38分となる。

[*3] 床ライナの最高温度を厳しくする入力条件の設定等:床ライナ上で燃焼するナトリウムプールの面積と厚さの関係を、ナトリウム漏えい燃焼実験や「もんじゅ」事故の解析結果を踏まえて厳しい入力条件とした。また、同一の部屋内でスプレイ燃焼とプール燃焼の同時計算が出来るように計算コードを改良し、スプレイ燃焼により高温となったナトリウムが燃焼を起こしているプールに落下することを考慮した。

床ライナの最高温度を厳しくする入力条件の設定等:床ライナ上で燃焼するナトリウムプールの面積と厚さの関係を、ナトリウム漏えい燃焼実験や「もんじゅ」事故の解析結果を踏まえて厳しい入力条件とした。また、同一の部屋内でスプレイ燃焼とプール燃焼の同時計算が出来るように計算コードを改良し、スプレイ燃焼により高温となったナトリウムが燃焼を起こしているプールに落下することを考慮した。

[*4] 漏えい率が1t/hの場合は、局所的な床ライナ最高温度として880℃の計算結果を与えている。これは「もんじゅ」事故での推定値(700~750℃)、ナトリウム漏えい燃焼実験-Ⅰの測定値(740~770℃)と比べても十分に厳しい。また、漏えい燃焼実験-Ⅱでは、実験用に設置したカメラ管台からの空気流入等の実験固有の特殊な条件により、特に高い温度(主に800~850℃)が測定されていることと比較しても、十分に厳しい結果となっている。
 なお、判決文には、燃焼実験-Ⅱにおいて、「貫通孔が発生した付近では、一時的に1000℃を超える温度が記録されている」[P.204]との記載があるが、これは実験において貫通孔が生じた後にナトリウムとコンクリートが反応して生じた温度であることが明らかであり、比較の対象となる温度ではない。

 漏えい率が1t/hの場合は、局所的な床ライナ最高温度として880℃の計算結果を与えている。これは「もんじゅ」事故での推定値(700~750℃)、ナトリウム漏えい燃焼実験-Ⅰの測定値(740~770℃)と比べても十分に厳しい。また、漏えい燃焼実験-Ⅱでは、実験用に設置したカメラ管台からの空気流入等の実験固有の特殊な条件により、特に高い温度(主に800~850℃)が測定されていることと比較しても、十分に厳しい結果となっている。 なお、判決文には、燃焼実験-Ⅱにおいて、「貫通孔が発生した付近では、一時的に1000℃を超える温度が記録されている」[P.204]との記載があるが、これは実験において貫通孔が生じた後にナトリウムとコンクリートが反応して生じた温度であることが明らかであり、比較の対象となる温度ではない。

[*5] 最近の電気化学会での議論において、現在までの文献調査に基づいても「もんじゅ」事故後にサイクル機構が実施した腐食試験データが系統的に採られたデータであり、腐食速度の上限であることが認められている。

 最近の電気化学会での議論において、現在までの文献調査に基づいても「もんじゅ」事故後にサイクル機構が実施した腐食試験データが系統的に採られたデータであり、腐食速度の上限であることが認められている。

なお、判決においては、湿分の影響について、「本件ナトリウム漏えい事故が12月という冬場でなく、夏の湿度の高い日(例えば、ナトリウム燃焼新解析が想定した気象条件である温度35℃、相対湿度80%の日)に発生していれば、溶融塩型腐食が起こり、床ライナに貫通孔が生じた可能性を示すものである。[P.220]」と記載されているが、サイクル機構が実施した高湿度条件(試験データ:絶対湿度4.6~4.8vol%、判決が例示している温度35℃-相対湿度80%は4.4vol%)でのナトリウム燃焼実験では、腐食減肉量は溶融塩型腐食で予想される量より低く、ナトリウム・鉄複合酸化型腐食による腐食量の範囲であることが確認されている。

<用語解説> ナトリウム・鉄複合酸化型腐食

 ナトリウム・鉄複合酸化型腐食とは、酸化ナトリウムと鉄とが高温の環境下で反応し、ナトリウム・鉄複合酸化物(化学式Na4FeO3等)が生成される腐食をいう。酸化ナトリウムは単独で鉄を酸化させることはできないが、高温では鉄と結合してエネルギー的により安定したナトリウム・鉄複合酸化物となるため、結果的に鉄を酸化させ、鋼材が腐食されることとなる。ナトリウム・鉄複合酸化物は、その融点以下で固体である場合や、液体であっても鋼材面近傍のナトリウム・鉄複合酸化物の濃度が増加すると、腐食を抑制する。

 

3. 床ライナの温度上昇により床ライナが損傷するか

<ポイント2-1:ナトリウム燃焼熱により床ライナが加熱されると熱膨張により床ライナが破損する>

(1) 判決の内容

  1.  従来の解析コードに改良を加え、スプレイ燃焼とプール燃焼を同時に計算できる解析コードを用いて(中略)床ライナの最高温度を計算したところ、配管室では約620℃、過熱器室では約750℃となり、本件申請者が本件許可申請に当たって想定した温度の約410℃(配管室)、約450℃(過熱器室)を大幅に上回っており、また、本件許可処分後の昭和60年の変更許可の際に本件申請者が解析した温度である約460℃(配管室)、約520℃(過熱器室)と比較しても、これを大幅に上回っていることが認められ、本件申請者の解析結果が不正確なものであったことは否定しようがなく、これを看過した本件安全審査は、その評価、判断に過誤・欠落があったことは明らかである。[P.207

    (2) 事実関係及び判決の問題点

    判決では、許可申請時の床ライナ最高温度解析値よりも新しい解析による最高温度が高いことから、本件申請者の解析結果が不正確であるとし、安全審査は、その評価、判断に過誤・欠落があったと判示している。しかし、以下に示すように、そもそも床ライナの温度は原子炉の冷却機能の維持には直接影響するものではないことから、新しい解析による床ライナの温度が当初許可時の解析の結果よりも高くなっていたからといって原子炉の安全性に影響を与えるものではないし、また、判決で比較している新しい解析に基づく床ライナ温度と当初許可時で解析された床ライナ温度とは解析の着目点が異なることから、直接比較することは妥当ではない。

    また、床ライナに着目して温度の計算結果を厳しくなるようにした解析においても、現状設備において床ライナが熱膨張するとしても壁コンクリートと床ライナの干渉による破損がないことを確認している。

    ① 設置許可申請書添付書類十の「2次冷却材漏えい事故」の解析の目的は、同事故時に系統分離機能が維持され得ること、つまり健全な他の冷却系統によって、原子炉は停止後も十分冷却され得ることを確認することにある。そのために、最も厳しい事態、すなわち、漏えい室の雰囲気圧力が高くなるように厳しい条件を課して漏えい室の雰囲気圧力の解析を行ったが、この際、併せて、床ライナの熱膨張に伴う床ライナと壁との干渉による影響を確認するとの観点から、参考として念のため床ライナ温度も確認したものである。床ライナの温度は、原子炉冷却機能の維持という「2次冷却材漏えい事故」の解析の目的からすれば、必要不可欠のものではなかった。「2次冷却材漏えい事故」の解析では、系統分離機能の維持の確認を目的として、漏えい室の雰囲気圧力の評価を実施し、安全審査の目的が達成されており、床ライナの温度は原子炉の冷却機能の維持には影響を与えないことから、床ライナの温度の解析が変わったからといって、本件安全審査の評価、判断に過誤・欠落があったとはいえない。なお、床ライナの温度は、床ライナの熱膨張に伴う床ライナとコンクリートの干渉による影響の確認に用いることから、これらの検討は具体的設計である詳細設計段階で確認されるべきものである。

    ② 平成7年のナトリウム漏えい事故後に行われた燃焼実験では、当初許可時に行った解析結果を上回る床ライナ温度が観測されたことから、動燃は新たに床ライナ温度のても、床ライナの健全性に問題が生じないことを確認した。ライナ温度解析を行った。その解析では、床ライナの温度が厳しくなる条件に着目することとして、プールの初期厚さ(10cm→1cm)、プールの排出(排出せず→排出考慮)などの計算条件を変更し、さらに同一の部屋内でスプレイ燃焼とプール燃焼の同時計算ができるように計算コードを改良して解析を行ったものである。プールの初期厚さを薄くし、プールの排出を考慮することにより、プールの熱容量が小さくなりナトリウム燃焼による温度上昇の効果が大きくなり、床ライナ温度が厳しく評価される。これらのように着目点を変更して、床ライナ温度を厳しく保守的に評価したものである(変更許可と比べて、配管室の床ライナ温度は約460℃から約620℃、過熱器室の床ライナ温度は約520℃から約750℃となった)。(炉安審ワーキンククループ資料、Na-59-3)

    ③ なお、旧科学技術庁では、念のため床ライナの温度が高くなるように条件設定を行い、スプレイ-プール同時燃焼を考慮した漏えい燃焼解析の結果により、壁コンクリートと床ライナの間には十分な間隙が設けられていることから、現状設備において壁コンクリートと床ライナの干渉による破損がないことを確認し、新たな手法を用いた床ライナ温度を用いても、床ライナの健全性に問題が生じないことを確認した[*1]、[*2]。(炉安審ワーキンククループ資料、Na-59-3)

     

    (3) 参考

    [*1] 床ライナ全体の熱膨張を評価した結果、2次主冷却系配管室(A)北側では630℃、同配管室(C)北側では700℃、その他の配管室及び過熱器室ではナトリウムの沸点の約880℃になっても、床ライナが熱膨張により壁と干渉することはなく、機械的に破損するおそれはないことを確認している

    床ライナ全体の熱膨張を評価した結果、2次主冷却系配管室(A)北側では630℃、同配管室(C)北側では700℃、その他の配管室及び過熱器室ではナトリウムの沸点の約880℃になっても、床ライナが熱膨張により壁と干渉することはなく、機械的に破損するおそれはないことを確認している

    [*2]  なお、判決文のP.223には、床ライナと建物が干渉する危険性について、以下の記述がある。

    ・ ナトリウム燃焼新解析は、ナトリウムの漏えい継続時間を最大で82分として解析したものであり、1時間当たりの漏えい率が1トンを超えれば、その継続時間は更に短くなっているのであって(甲イ357)、このような解析条件には基本的に疑問のあるところである。かかる解析条件のもとに算出された床ライナの最高温度約620℃を基準に、床ライナと建物が干渉する危険性がないと断定することは相当ではない。[P.223

     判決文のこの部分については、論旨が不明である。
     漏えいはドレンが終了するまで継続するが、漏えい率が大きくなるほど系外へ流出するナトリウム量が多くなり、ドレンする量は逆に少なくなる。したがって、漏えい率が大きいほど漏えい継続時間が短くなるのは当然である。また、判決では、漏えい時間が長くなるとライナ温度(あるいは膨張量)がより高くなると推定しているようであるが、実際は漏えい継続時間が長くなっても酸素が無くなることによりライナ温度は降下するため、最高温度が変わることはない。

     

     

    <ポイント2-2:単一故障として、緊急ドレン失敗を想定すると結果が厳しくなる>

    (1) 判決の内容

    ① 「2次冷却材漏えい事故」における故障を仮定するのであれば、ナトリウムドレン操作機器の故障を想定し、ナトリウムの緊急ドレンに失敗することを想定した方が余程「結果を最も厳しくする単一故障」を仮定したことになると思われる。上記ナトリウム燃焼解析では、ナトリウム漏えい後30分以内にドレンが開始されることを前提に、ナトリウム漏えい継続時間が約80分となっているが、ドレンに失敗すれば、事故ループの冷却材ナトリウムの全部が配管から漏えいし、極めて長時間にわたって燃焼が続くことは明らかである。[P.221-222

    (2) 事実関係及び判決の問題点

     判決では、ナトリウムの緊急ドレンに失敗することを単一故障として解析すべきと判示している。しかし、以下に示すように、単一故障は原子炉の基本的安全機能別に想定するものであり、本件のナトリウム漏えいの熱的影響の評価に要求されるものではない。

    ① 単一故障は原子炉の基本的安全機能別(「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」)に想定することが安全評価指針で求められており、「2次冷却材漏えい事故」評価については「冷やす」という基本的安全機能について想定されている。

    ② 5.項で詳述するように、例え床ライナが損傷した議論を行うとしても、ナトリウム漏えいの熱的影響により炉心崩壊に至るものではないことはもちろん、隣接する冷却系の健全性が損なわれることはなく、炉心冷却に影響を与えることはない。したがって、原子炉の安全性の確保のために、事故の発生箇所ないし発生系統(本件に関しては当該2次冷却系ループ)について安全機能を期待しないものとするのに加えて、「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」という基本的安全機能に関係する他の健全な系統について、敢えて作動しないとする仮定を置く考え方が、原子炉の冷却の観点では最も厳しいので、このような仮定を置くことが、本来の「単一故障」の適用の考え方である。

    (注)判決で用いている「緊急ドレン」という言葉は、平成14年12月に経済産業大臣が許可した改造工事に係る設置変更許可の中で用いられている言葉で、通常のドレン操作に加えて緊急にドレンする場合を想定したものである。現状設備では、通常のドレン操作のための設備しかなく、変更許可において「緊急ドレン」の機能を付加したものである。したがって、上記は、判決で言っている「緊急ドレンに失敗する」という言葉が現状設備における通常のドレン操作に失敗することを意味するものであると解釈して説明を行ったものである。

    4. 「2次冷却材漏えい事故」に対する安全審査の在り方

    <ポイント3-1:腐食機構の知見がなく、腐食を考慮した審査をおこなっていない(新知見の反映と確認について)>

    (1) 判決の内容

    ① 高温のナトリウムと鉄の腐食機構の知見を、本件申請者及び本件安全審査に携わった関係者が本件ナトリウム漏えい事故が発生するまで有していなかったことは、被控訴人の自認するところである(なお、この知見が問題意識があれば本件許可申請当時でも知り得た知見であることは、原子力安全委員会の事故調査ワーキンククループの指摘しているところである。)[P.205-206

  2.  ナトリウムの酸化物によって床ライナが腐食する場合のあることが明らかになった以上、もはや床ライナの敷設によって無条件にナトリウムとコンクリートとの直接接触を防止できる保障はなくなったといわなければならない。[P.208

     

    1. 事実関係及び判決の問題点

    判決では、腐食機構が明らかになった以上、もはや床ライナの敷設によって無条件にナトリウムとコンクリートとの直接接触を防止できる保障はなくなったと判示している。しかし、以下に示すように、新知見の速い速度の腐食機構に対しても、適切な運転手順と適正な厚みをもつ鋼製の床ライナでコンクリートとの直接接触を防止は可能であり、現状設備においてコンクリートの直接接触の防止を図れることを確認している。

    ① 平成7年の「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故の後に事故の原因究明の一環として平成8年に実施されたナトリウム漏えい燃焼実験-Ⅱにおいて床ライナに腐食による貫通孔が生じた。燃焼実験-Ⅱの後の詳細な検討により、この実験で生じた貫通孔は、溶融塩型腐食によるものであることが分かった。

    ② 原子力安全委員会の事故調査ワーキンククループから調査委託された電気化学会が知り得たとしている知見は「腐食は起きるだろう」という「知見」であり、定量的なデータが存在し、数時間で6mmの鋼板を貫通することが知り得た訳ではない。

    ③ 当初設置許可時には、床ライナに貫通孔が生じるような溶融塩型腐食の知見はなく、「もんじゅ」事故後に系統的な腐食速度に関する実験データが蓄積されたものである。

    ④ 上記の新知見は、溶融塩型腐食という、速い腐食速度の腐食機構が存在するというものであって、適切な運転手順と適正な厚みをもつ鋼製の床ライナによりナトリウムとコンクリートの直接接触を防止し得るものである。上述のように安全審査は、基本設計の安全性に係る事項を審査するものであるから、新知見を考慮しても、鋼製床ライナの敷設によりナトリウムとコンクリートの直接接触の防止を図るという基本設計の妥当性が失われることはなく、安全審査に過誤、欠落はない。

    なお、旧科学技術庁は、念のため新知見を踏まえたナトリウム漏えい時の床ライナの腐食量の検討を行い、新知見を考慮しても、現状設備において鋼製床ライナによりナトリウムとコンクリートの直接接触の防止を図れることを確認している。(炉安審ワーキンククループ資料、Na-59-3)

     

    <ポイント3-2:安全審査において、床ライナについて腐食・減肉を前提とした安全確認をしていなかった(基本設計の範囲について)>

  3.   なお、判決文の

 

(1) 判決の内容

  1.  本件原子炉施設の設計において、床ライナを含む2次主冷却系施設に腐食を考慮した対策が盛り込まれていないことは当然である。そうだとすれば、2次冷却材漏えい事故の安全審査に過誤、欠落があったと認められる。[P.206
  2.  本件安全審査においては、(中略)腐食を考慮した審査をしていないけれども、もしその知見を有していたならば、当然、漏えいしたナトリウムの燃焼継続時間、床ライナの板厚の程度及び腐食の減肉速度などが審査された筈である。[P.208

    ③ 具体的設計の当否を審査する設計及び工事の方法の認可の段階で、腐食を考慮した具体的な設計がなされるとは、到底期待することができない。[P.209

    (2) 事実関係及び判決の問題点

    判決では、2次主冷却系施設に腐食を考慮した対策が盛り込まれておらず、「2次冷却材漏えい事故」の安全審査に過誤、欠落があったと判示している。しかし、以下に示すように、安全審査は基本方針の妥当性を審査するものであり、床ライナの厚みなど詳細については、後段規制である「設計及び工事の方法の認可」で行うものである。

    ① 原子炉設置許可における安全審査は、基本設計ないし基本的設計方針に係る事項を審査の対象とするものである。床ライナについては、鋼製の床ライナを設置することにより、漏えいナトリウムと床コンクリートとの直接接触の防止を図るという基本的設計方針を含む事故防止対策について審査したものである。このような基本的設計方針において、床ライナの厚さをいくらにするか、という問題は、床ライナが敷設される部屋の大きさ、ナトリウムドレン設備の能力や床ライナの冷却設備の有無などの多くの周辺設備の具体的仕様等との関連において決めるべきものであって、設置許可処分の段階においてこれを定めることは合理的とは言えず、詳細設計以降の段階においてこれを決めることが技術的にも妥当である。従って、床ライナの厚みなど詳細な設計内容の妥当性については、軽水炉における配管の寸法と同様に、後段規制である「設計及び工事の方法の認可」で行うものであり、設置許可時の安全審査の対象となるものではない。当初設置許可における具体的な審査の内容としては、鋼製の床ライナの融点はナトリウム漏えい時の床ライナ温度より十分に高いため、ナトリウムとコンクリートの接触は防止しうるものと判断された。また、審査の際、腐食については考慮されなかったが、適切な厚さの床ライナを用いれば、ナトリウムとコンクリートの直接接触を防止することは容易に可能であることから、腐食について考慮しなかったからといって、鋼製の床ライナを設置するという基本的設計方針に問題が生じるわけではない。

    ② なお、旧科学技術庁は、念のため新知見を踏まえたナトリウム漏えい時の床ライナの溶融塩型腐食による減肉を検討した結果、現状設備において溶融塩型腐食を仮定しても床ライナは貫通せず、ナトリウムとコンクリートの直接接触は防止できることを確認している。(炉安審ワーキンククループ資料、Na-59-3)

    5. ナトリウム漏えい事故により炉心溶融事故が起こり得るか

    <ポイント4:床ライナが破損しナトリウム・コンクリート反応が生じると炉心溶融事故に繋がる>

    (1) 判決の内容

    ① 現在の知見では、ナトリウムとコンクリートが本格的に接触したときにどのような事象が生じるのかは未だ十分に解明されていないことが認められるから、事故発生ループ配管室又は過熱器室の床ライナの健全性が損なわれ、同所で本格的なナトリウム・コンクリート反応が生じた場合、それが他の冷却系ループに具体的にどのような影響を及ぼすかを正確に予測することはできないけれども、事故ループ以外の冷却系ループが正常に機能する保障は全くない。そして、弁論の全趣旨によれば、本件原子炉施設の設計では、3系統(ループ)の冷却能力がすべて失われることは想定していないことが認められるから、仮に事故ループ以外の残り2ループの冷却能力も同時に失われる最悪の事態になれば、たとえ原子炉の緊急停止に成功しても、その後も核燃料から発生する崩壊熱を冷却することができず、炉心が溶融することは避けられないところである。[P.213

    1.  少なくとも被控訴人は、ナトリウムの漏えいにより1つのループの配管室又は過熱器室で本格的なナトリウム・コンクリート反応が生じても、他のループの冷却能力に影響はなく、系統分離が維持されるとは主張していない。そうだとすれば、2次主冷却系の1ループで本格的なナトリウム・コンクリート反応が起これば、その被害は他のループにも及び、系統分離が破壊される高度の蓋然性を否定できないと認めるべきである。[P.225

       

      (2) 事実関係及び判決の問題点

      判決では、ナトリウム・コンクリート反応現象は解明されておらず、起こった場合の影響を予測することはできないが、事故ループ以外の冷却系ループが正常に機能する保障はなく、崩壊熱を冷却できずに炉心が溶融することは避けられないと判示している。しかし、以下に示すように、国内外の研究によりナトリウム・コンクリート反応現象は解明されており、仮にナトリウム・コンクリート反応が生じたとしても、炉心溶融事故に繋がることは否定される。

      ① 国側は、2次冷却材漏えい時に、床ライナは損傷しないとの主張を行っており、床ライナの設置によりナトリウムとコンクリートの直接接触を防止できることから、床ライナの破損や破損後のナトリウム・コンクリート反応が生じることを仮定した議論・主張は行っていない。すなわち、国側がナトリウム・コンクリート反応が生じた後の影響について主張していないのは、設置許可処分の安全審査の範囲を超えるからである。あえて、床ライナの損傷が発生するとした場合の事象推移は以下のとおり。

      ②  ナトリウム・コンクリート反応の研究は国内外で多数の実験研究が行われており、仮にナトリウム・コンクリート反応が生じたとした場合の知見は以下のとおりである。

      a. 高温のナトリウムとコンクリートが接触すれば、化学反応により水素が発生し、コンクリートは侵食される。コンクリートの熱伝導度は低いので、熱的な影響を受ける部分は表面近傍に限定される。

      b. ナトリウム燃焼が生じている状態の下では、燃えつつあるナトリウムの炎が火点となりナトリウム・コンクリート反応で発生する水素は直ちに燃焼するとの知見が得られている。即ち、水素がナトリウムとコンクリートの反応を起している部屋で蓄積することはなく、水素濃度が燃焼下限値の4%に達することはない[*1]

      c. また、ナトリウム・コンクリート反応によるコンクリートの侵食深さは20~30cmで止まるとの知見が得られている。溶融塩型腐食の検討対象となるのは中小漏えいに限定されるので、影響を受ける面積も限定される。したがって、ナトリウム漏えいを起こしている系統と他の系統を分離している1mの厚みをもつコンクリート壁の健全性が損なわれることはない。

      ③ 「もんじゅ」は3ループの冷却系統で構成され、系統分離が図られている。原子炉の安全性の確保のために重要な炉心冷却については、1ループで可能なように設計されている[*2]

      ④ したがって、系統分離が損なわれて事故発生ループの影響が健全ループに影響を及ぼすことはないことから、3ループの冷却能力がすべて失われるというシナリオを考えること自体に技術的な判断の誤りがある。

      ⑤  以上より、床ライナの破損が炉心溶融事故に繋がることは否定される。

 

(3) 参考

[*1] さらに仮に水素が蓄積すると想定した場合でも、以下のように直ちに建物の健全性が損なわれるものではない。

 さらに仮に水素が蓄積すると想定した場合でも、以下のように直ちに建物の健全性が損なわれるものではない。

(1) 水素が蓄積すると仮定しても、ナトリウム燃焼が点火源となるため、水素燃焼は燃焼限界濃度付近(4%付近)で生じると考えられる。燃焼限界濃度付近での水素燃焼は、不完全燃焼の領域であり(即ち、爆発的に燃焼することはない)大きな圧力上昇を伴うものではない。

(2) 2次冷却系の建物は同一系統内では複数の部屋が連通しており、一つの部屋で水素燃焼が生じて、仮に圧力が上昇するような状態を考えたとしても、圧力は他の部屋に容易に開放される。

(3) さらに、建物には、圧力上昇対策として蒸気発生器室の天井にブローアウトパネル(主蒸気管破断時の高圧(約150気圧)の蒸気漏えいによる内圧上昇の抑制対策、開放圧力は20.6kPag(0.21kg/cm2g)±20%)が設置されており、水素燃焼に伴う建物内の圧力は建屋耐圧(58kPa)以下で大気に開放される。

[*2] 3ループの冷却系とは別に独立したメンテナンス時に使用する冷却系(メンテナンス冷却系)があるので、仮に万が一主冷却系が3ループとも冷却機能を失ったとしても、原子炉停止後の崩壊熱は除去できる。

3ループの冷却系とは別に独立したメンテナンス時に使用する冷却系(メンテナンス冷却系)があるので、仮に万が一主冷却系が3ループとも冷却機能を失ったとしても、原子炉停止後の崩壊熱は除去できる。

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